腰痛症とは、
どのような病気なのでしょうか。
原因や症状、予防の仕方、
検査や治療法などについてお伝えします。
腰痛症について詳しく知って
早く治しましょう。
01
腰痛症は、腰が痛くなる病気です。ただし、ある特例の症状を指すわけではなく、腰痛を引き起こすさまざまな疾患の総称です。腰痛は、さまざまな理由によって起こります。特に多いのは、腰の骨に負担がかかることで神経を圧迫し痛みが起こるケースですが、感染や炎症、腫瘍、がん、ストレスによって腰痛が発症することも少なくありません。
また、原因となる疾患によって、腰の痛み方もさまざまです。腰を曲げると痛い、疲れたときだけ腰が痛む、腰からふくらはぎにかけてしびれる、突然刺すような痛みが出て動けなくなる、発熱を伴って動けなくなるなど、患者さんによって違います。
腰痛を治すために大切なのは、まずは原因を探ることです。そして、それに合った適切な治療を行うことです。あなたの腰の痛み方は、どんな症状でしょうか? それによって治療法も変わってきます。腰痛症について知って、一緒に治し方を考えていきましょう。
02
腰痛の原因には、さまざまなものがあります。一般的に多く見られるのは、腰椎椎間板ヘルニア、骨粗鬆症、坐骨神経痛という3つの疾患です。
背骨には、骨と骨の間でクッションの役割をしている椎間板(ついかんばん)という軟骨があります。この椎間板の一部が外に飛び出して、周囲の神経を圧迫し、痛みやしびれを引き起こす病気が、椎間板ヘルニアです。この症状が腰椎(ようつい:腰の骨)で起こると「腰椎椎間板ヘルニア」と呼ばれ、多くの方々の腰痛の原因になっています。
腰椎椎間板ヘルニアは、腰痛の原因の中でも最も重症度が高いと言われている病気です。
椎間板ヘルニアは、ヘルニアの程度によって様々な症状があります。腰や足が痛くても、楽な姿勢で横になって休んでいれば1〜2週間で痛みが軽くなることもあります。
しかし、重症になると排尿障害、長期化すると大腿や下腿の筋萎縮(足の筋肉が痩せてしまう病気)を引き起こすことがあります。腰痛はいろいろな病気で起こるので、腰痛だけでは腰椎椎間板ヘルニアとはいえません。ただし、足に痺れがあるときは要注意です。
飛び出した椎間板は、多くの場合、片側の神経を圧迫する程度の大きさですので、しびれは片足に起こります。腰が痛くなり、片足だけにしびれを感じたら、腰椎椎間板ヘルニアの可能性があります。そういうときは、迷わず専門医に診せてください。
骨粗鬆症は、骨の密度が低下し、骨の量が少なくなる病気です。骨粗鬆症によって骨がもろくなると、つまずいて手や肘をついた、しりもちをついた、鉢を持って移動させた、くしゃみをした…などのわずかな衝撃でも骨折してしまうことが少なくありません。
骨粗鬆症は、閉経期以降の女性に多く見られる病気ですが、若い人でも栄養不足や運動不足、ステロイド剤などの影響で発症することがあります。私たちが生きている間、骨は形成と破壊を繰り返しています。このバランスが崩れることによって、骨粗鬆症は起こるのです。
症状が進み、骨の密度が低下すると、いつの間にか骨が潰れていたり、身長が縮んでいたり、猫背になったり、少しふらついただけでも脚の付け根の骨が折れたりして、腰痛や骨折などの症状を引き起こし、生活に支障をきたします。
また、こうしたけがで入院をしたり、寝たきりになるなど、生活リズムが崩れてしまうと、高齢の方は一気に認知症・痴呆が進んでしまいます。日本では総人口の約10%の人が、骨粗鬆症を発症していると言われています。以下のページで詳しく解説していますので、原因や症状について知って、予防に努めましょう。
坐骨神経(ざこつしんけい)は、腰から足の先までつながっている、人体のなかでも最も太くて長い、何本もの神経が集まった、神経の束のようなものです。この坐骨神経が圧迫されると、その周辺にある知覚領域(痛みを感じるエリア)が刺激され、腰や足などに電気が走ったような痛みや、ピリピリしたしびれ、麻痺などを引き起こします。
坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)は、腰椎椎間板ヘルニアによって起こることが多い症状ですが、中高年になると腰部脊柱管狭窄症(ようぶ せきちゅうかん きょうさくしょう)という病気で発症するケースが多くなります。
脊柱管(せきちゅうかん)とは、背骨の中にある通り道のようなものです。背骨を支える筋肉(靭帯)の組織は、加齢によって老化し、骨は変形していきます。その結果、脊柱管内が圧迫され、神経を刺激し、腰や足などに痛みやしびれを引き起こすのです。
坐骨神経痛は、軽度のうちなら、日常の姿勢や動作を見直して、ストレッチなどを習慣化することで、自分でも予防したり、改善したりすることができます。ただし、強い痛みやしびれを感じたり、腰が曲がらない、歩くのがつらい…といった症状があった場合は、重症になっている可能性が高いです。必ず受診して医師の指導を受けてください。
腰痛には、他にもさまざまな原因があります。背骨の骨折・ぎっくり腰などによる急性腰痛、脊椎炎(せきついえん)・脊椎カリエスなどの炎症、がんなどの腫瘍性の疾患、胃腸・膵臓・肝臓などの内臓疾患、子宮などの婦人科の病気、ストレスによる心因性の腰痛、職業病に由来する腰痛など、数え切れないほどあり、それぞれ治療法も異なります。
だからこそ大切なのは、腰痛が続いたときは、病院に行って、できるだけ詳しい症状を伝えることです。痛みの原因をきちんと探ることから、腰痛症の治療は始まるのです。
03
当クリニックには「他院で腰痛の治療を受けていたけれど、なかなか治らない」と言って来院される方がとても多くいます。「整骨院でマッサージを受けても、その場は楽になるものの、次の日からまた痛い」「整形外科で、電気を流して、飲み薬や湿布をもらっているけれど治らない」など、他院で腰痛の治療を受けてもなかなか痛みが取れないとのことで、私たちのところにいらっしゃるケースがほとんどです。
なぜ腰痛は、なかなか治らないのでしょうか。患者さんは一人ひとり症状が微妙に違います。ある患者さんには合っている治療法でも、別の方には合わないこともあります。ところが、手間をかけて個別に治療しても、我が国の保険制度ではその手間賃は発生しません。だから多くの病院やクリニック・整骨院などでは、そこまではできないのです。
腰痛は根治が難しい、なかなか治らないというイメージがありますが、決してそんなことはありません。多くの場合は、腰痛の原因を見誤っていたり、適切な治療を行なっていないだけなのです。患者さん一人ひとりときちんと向き合って、症状に合った治療をしていけば、短期間で治すことも可能です。
04
人は立位歩行(立って歩く)している以上は、腰、骨盤、膝、足関節、すべてに負担がかかってしまいます。約3kgもの重量がある頭を1日10時間以上もずっと支えているのです。腰痛の方は、腰のみが悪いのでしょうか?
実は、そうではありません。姿勢そのものの変化が、関節への負担を高め、「筋緊張」と呼ばれる筋肉の収縮を引き起こしたり、「不均等」と呼ばれる筋肉が偏った使われ方をする状態を招いたりして、腰に痛みやしびれを引き起こすケースが多いのです。
腰痛は、ほとんどの場合、日常の何気ない姿勢や動作によって引き起こされます。腰に負担をかける行動を避けることによって、椎間板ヘルニアなどの発症を防ぐことができます。ストレッチをしたり、筋力を強化したり、体重の増加を避けることも大切です。
当クリニックでは、腰痛だから腰痛だけを診るということはしません。腰痛が出てきた経緯を詳しくお聞きします。そして腰以外、膝、脚関節、足の裏をチェックします。診療室に入室されてきたときの姿勢まで見ています。腰の単独の病気なのか、かばっているための二次的な痛みなのか、腰痛を起こす本当の原因はどこなのか考えます。
そして、わかりやすく説明し、治療の計画を立てます。納得いただければ、治療を開始します。わかりづらいことがあれば、何度でも丁寧にわかるように説明します。このように診察を勧めますので、初めての方にはお時間をいただいております。
05
当クリニックでは、問診・触診によって整形外科分野の腰痛か否かを判断したら、必要な検査を順次進めて診断します。椎間板ヘルニアなどの疑いがある場合は、MRI(電磁波を当てて断層撮影をする方法)などによる検査を行い、原因となる疾患を特定します。
来院される患者さんから「他院でレントゲンを撮って椎間板ヘルニアと診断されました。痛み止めを処方されて、電気も当てていましたが、なかなか良くなりません」という話をよく伺うのですが、そもそもヘルニアはレントゲンには映りません。
ヘルニアは軟骨なので、レントゲン写真には映らないのです。中高年に多い腰部脊柱管狭窄症もレントゲンである程度は推測できますが、より詳しく診断するためにはMRIや脊髄造影などの検査が必要です。つまり腰痛は、レントゲンでは診断できないのです。私たちは、CT(コンピュータ断層撮影法)、脊髄造影検査、椎間板造影、神経根造影、MRIといった方法で検査し、腰痛の原因と、その適切な治療法を探っていきます。
06
当クリニックでは、できる限り手間をかけて、患者さん個人に合った治療をしています。腰痛は、人によって原因も痛み方もさまざまです。短期間で成果が上がる方もいれば、そうでない方もいます。だからこそ、一人ひとりと向き合った治療が大切なのです。
症状によっては、血管外科、婦人科、整形外科など、他科にまたがって、その原因の治療をすることも必要になります。クリニックのレベルを超えて高度な治療が必要な方には、地域連携がしっかり整っている病院施設の専門医に直接ご紹介します。充分な治療が完了しましたら、その後のアフターケアは、当クリニックできちんとしていきます。
個別に違う治療をして損をしないかって? いえいえ、早く良くなっていただいて、腰痛で困っている他の方に当クリニックを奨めていただければ、それで十分です。
他の整形外科が休診のため、お薬・湿布・他院処方のお薬が足りないなどの用件のみをご希望の方は、受付にお申し出ください。お時間をとらせないように対応していきます。
腰痛症は、軽度の症状なら、しばらく安静にして、予防策を心掛けていれば、痛みが治まることも少なくありません。しかし、痛みが続くときに放置しておくと、重篤な障害をもたらすことがあります。腰痛が続くときは、できるだけ早くいらして相談してください。