症状のご相談
(坐骨神経痛の原因・治療)

坐骨神経痛

坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)とは、
どんな病気なのでしょうか。
原因や症状、予防の仕方、検査や
治療法などについてお伝えします。
坐骨神経痛について詳しく知って
早く治しましょう。

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坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)とは?

坐骨神経(ざこつしんけい)というのは、腰から足の先までつながっている、人体のなかでも最も太くて長い、何本もの神経が集まった、神経の束のようなものです。この坐骨神経が圧迫されると、その周辺にある知覚領域(痛みを感じるエリア)が刺激され、電気が走ったような痛みや、ピリピリしたしびれ、麻痺などを引き起こします。
 
痛みが出る場所も、腰、おしり、太もも、ふくらはぎ、ひざの裏、すね、足先など、人によってさまざまです。痛みの原因となる疾患によっては、歩行が困難になる、座っていられなくなる、排泄ができなくなる…など、重篤な症状を引き起こすことがあります。
 
坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)は、ある特定の病気ではなく、これらの症状すべてを指す総称です。そのため、いろいろな原因や症状があります。代表的なものをお伝えしていきますので、ご自分の症状に該当するものはないか、チェックしてみてください。

坐骨神経痛画像1

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坐骨神経痛の原因となる疾患

□腰椎椎間板ヘルニア(ようつい ついかんばん へるにあ)

坐骨神経痛の原因として、年齢を問わず多くの方に見られるのが「椎間板ヘルニア」です。椎間板(ついかんばん)とは背骨の骨と骨の間にあるクッションのようなものですが、背骨に負担がかかったり、老化すると、徐々に破れてヒビが入り、ゼリー状の中身が外に飛び出して神経を圧迫し、腰や足などに痛みやしびれを引き起こします。

  このように体内にある臓器の一部が本来あるべき位置から飛び出すことを「ヘルニア」と言います。背骨は、頭を支えるための頸椎(けいつい)、背中を支えるための胸椎(きょうつい)、腰を支えるための腰椎(ようつい)など24個の骨が重なってできています。そのため、どの部分もヘルニアを発症する可能性があります。中でも特に多いのが、腰や足に痛みが生じる「腰椎椎間板ヘルニア(ようつい ついかんばん へるにあ)」です。
 
腰椎椎間板ヘルニアは、腰痛の原因の中でも最も重症度が高いといわれている病気で、放置しておくと、神経麻痺などの重篤な障害をもたらします。重いものを持ち上げたときに立っていられないほど腰が痛くなったり、片足だけにピリピリしたしびれを感じたりしたら、腰椎椎間板ヘルニアの疑いがあります。迷わず病院に行って、専門医に診せてください。(別のページでも詳しく解説しています。ぜひ読んでみてください)

□腰部脊柱管狭窄症(ようぶ せきちゅうかん きょうさくしょう)

中高年に多いのは、「腰部脊柱管狭窄症」による坐骨神経痛です。脊柱管(せきちゅうかん)とは、背骨の中にある通り道のようなものです。背骨にある椎間板や椎間関節、じん帯などは、加齢にともって老化し変形していきます。その結果、脊柱管内がせまくなり、神経を刺激し、お尻や太ももなどに痛みやしびれを引き起こすのです。
 
腰部脊柱管狭窄症には、間歇性跛行(かんけつせいはこう)になりやすいという症状もあります。間歇性跛行とは、しばらく歩くと、足に痛みやしびれが生じて、少し休むと歩けるようになるものの、歩行を再開すると、また痛みだす症状のことをいいます。人によっては、下肢に力が入らなくなる、つまずきやすい、階段を上りにくいといった症状や、尿が出にくい、残尿感があるなどの排尿障害が起こることもあります。
 
お尻や太ももに痛みやしびれを感じ、間歇性跛行の症状が見られる場合には、脊柱管狭窄症の疑いがあります。病院に行って、診断・検査を受けたほうがいいでしょう。

□梨状筋症候群(りじょうきん しょうこうぐん)

坐骨神経は、腰のあたりから出て足へ向かい、骨盤の出口のところで梨状筋(りじょうきん)という筋肉のトンネルを通ります。通常この筋肉は柔らかいのですが、負担がかかって硬くなってしまうと、おしりや太ももの裏側に痛みが生じたり、側を通る坐骨神経を圧迫してしびれが出てきます。こうした症状が「梨状筋症候群」と呼ばれています。
 
激しい運動などによって梨状筋が炎症を起こすと、坐骨神経を刺激し、おしりや太ももに痛みやしびれを引き起こします。また、中腰の姿勢の作業、長時間のデスクワークや運転など、梨状筋に負担のかかるような行為によって発症することも少なくありません。
 
梨状筋症候群は、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症ほど一般的ではなく、スポーツの世界以外ではあまり知られていませんが、実は多くの人が発症している病気です。ただし、この病気はMRIやレントゲンなどの検査ではみつけることができません。おしりや太ももに痛みやしびれを感じたら、専門医に症状を詳しく話して適切な治療を受けてください。

□その他の原因となる疾患

坐骨神経痛の原因となる疾患は、ほかにも下記の例が挙げられます。

・変形性腰椎症(へんけいせいようついしょう)
加齢にともなって、椎間板が痛んできたり、腰の骨が変形する病気です。
 
・腰椎分離症(ようついぶんりしょう)・分離すべり症(ぶんりすべりしょう)
腰の骨に負担がかかることによって発症する疲労骨折です。
 
・脊椎炎(せきついえん)・脊椎カリエス(せきついかりえす)
感染した細菌が血流によって背骨に運ばれることで化膿する病気です。

坐骨神経痛画像2

上記の腰部や脊椎の病気以外にも、坐骨神経の腫瘍、アルコールなどの中毒性疾患、糖尿病、帯状疱疹、下肢の動脈閉塞、子宮内膜症などの婦人科疾患、喫煙、ストレスなど、坐骨神経痛を引き起こす要因は数多くあります。

また、これらの疾患や原因がなくても、もともとの体質や骨の形など、先天的な要因で発症するケースもあります。腰や足、おしりなどに痛みやしびれを感じたら、早めに原因を確かめて、予防も含めてきちんとした対策をとることが大切です。

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坐骨神経痛の予防

坐骨神経痛の原因となる疾患は、ほとんどの場合、日常の動作や姿勢を見直すことによって予防できます。なるべく重いものを持たない、中腰を避ける、長時間同じ姿勢をとらない、激しい運動を避ける、ストレッチをする、仕事や家事の合間に適度に休憩をとる、肥満しないように注意する、腹筋や背筋を鍛えるなど、背骨や腰に負担をかけない動作・姿勢を心がけることが、坐骨神経痛を予防するいちばんの対策になります。
 
なぜかというと、神経という器官は、実は圧迫を受けるだけでは痛みを発生しないのです。神経が長く圧迫され、かつ、その周辺の循環障害によって炎症が誘発され、炎症物質が出てくると、初めて神経が異常感覚を脳に伝えます。そして、脳が「痛い」と感じると、痛くない姿勢を無意識にとるようになります。この「無意識の姿勢や動作」が、運動器の疼痛を新たに引き起こしてしまうケースが多いのです。
 
坐骨神経痛は、軽度のうちなら、日常の動作や姿勢を見直して、ストレッチなどを習慣化することで、自分でも予防したり、改善したりすることができます。ただし、強い痛みやしびれを感じたり、腰が曲がらない、歩くのがつらい…といった症状があった場合は、重症になっている可能性が高いです。必ず受診して医師の指導を受けてください。

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坐骨神経痛の診断・検査

坐骨神経痛の原因として特に多く見られる腰椎椎間板ヘルニアは、レントゲンでは診断できません。椎間板は軟骨なので、レントゲン写真には映らないのです。また、中高年に多い腰部脊柱管狭窄症も、単純X線(レントゲン)写真である程度は推測できますが、より詳しく診断するためにはMRIや脊髄造影などの検査が必要となります。

病院によっては、腰のレントゲン写真を見せられて「腰が神経を押しているから坐骨神経痛」と診断されるようですが、レントゲンで腰椎(腰の骨)から出ている神経を見ることはできないのです。
 
坐骨神経痛を診断するには、CT(コンピュータ断層撮影法)、脊髄造影検査、椎間板造影、神経根造影、MRIといった検査が必要です。その中でも最も適しているのはMRIによる検査です。MRIとは、人体に電磁波を当てて断層撮影をする方法です。
 
MRIで使われる磁石や電波は、基本的に人体への影響はありません。放射線を使わないので、被ばくの心配もありません。注射の針を刺す痛みや薬の副作用といった「侵襲」と呼ばれる患者さんの身体に有害になる可能性があることも少ないので、安心して検査を受けることができます。外来で簡単に検査ができ、得られる情報も多いので、坐骨神経痛の疑いがあるときは、まずMRIをおすすめします。

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坐骨神経痛の治療法

坐骨神経痛の治療は、原因の疾患にかかわらず、まずは症状を和らげる対症療法が主体となります。手術以外の治療(保存的療法)を開始し、それらを十分に行っても痛みが良くならない場合や尿や排便などに障害があらわれた場合には手術が検討されます。
 
当クリニックでは、ヘルニアによる神経症状が起こって、続いて姿勢異常による各運動器由来(股関節、仙腸関節、臀筋(でんきん)、ハムストリングなどの関節由来・筋緊張)の痛みをともなって来院されるケースには、よく症状を聞いて、MRIなどによる検査を行い、坐骨神経痛の症状に合わせたアドバイスをしていきます。
 
ヘルニア腰椎由来の神経痛であれば、より高度な脊椎脊髄病専門機関の医師をご紹介し、速やかに治療をいたします(単に医療機関へのご紹介ではなく、専門の医師に直接ご紹介します)。その後のアフターケアは、当クリニックできちんとしていきます。